エピソード1<施設に初出勤>

お仕事回想録

職員とご利用者がのんびりとした時間を過ごし、

日の当たるサンルームのようなところで昔話を聞いたり、お茶をして過ごす。

当時、『ぶーにゃ』が高齢者施設に対して抱いていたのは

ほのぼのとしたイメージでした。

介護を仕事にする人は皆、心もキレイで優しい、ステキな人達ばかりなんだろうなぁ・・・

と、ワクワクしながらの初出勤だったことを覚えています。

ドキドキ、ワクワクしながらの初出勤

入職初日、緊張しながら職員用玄関から介護主任さんに伴われて

大勢のご利用者が集まるホールへと移動しました。

『ぶーにゃ』が入職したのは特別養護老人ホームでした。

職員は皆忙しそうにバタバタと走り回っており、廊下には独特の臭い。

次第に聞こえてくる「座っていなさい!」の声。

声がする方を見ると、女性のご利用者と女性職員が並んで座っており、

女性職員は帳簿に手書きでケース記録を書きながら、

隣のご利用者が少しでも椅子から立ち上がる素振りを見せると

「座っていなさい!」と、険しい顔をして言っているのです。

主任さんに紹介されてまずは挨拶。

女性職員さんは、先ほどまでとはうって変わった表情で挨拶をして下さいました。

初仕事

施設内を案内してもらった後、ホールには既に大勢のご利用者が集まっており、

食事用のエプロンを装着して回るように指示を受けた『ぶーにゃ』は、

ご利用者一人ひとりに話し掛けながらエプロンを手渡したり、

ご自分で装着できない人にはエプロンを装着するお手伝いをして回りました。

ホールには30名ほどのご利用者がおり、上の階にも30名ほどのご利用者がいると

説明を受けました。

スタッフルームへと移動し、集まった他の職員の前で自己紹介。

ホールにはエプロンを装着したご利用者がずらり。

職員さんについて、給湯室のようなところでコップを30個ほど並べ、

大きなヤカンからお茶をコップに入れていきます。

お茶のいくつかには『とろみ剤』を入れてかき混ぜてトロミをつけていきます。

冷蔵庫からゼリーのように固まった『お茶ゼリー』を取り出してキッチンワゴンに乗せ、

「この人にはこれ、この人にはこれ。」と、ご利用者の名前と、配る飲み物について説明を受けながら一緒にお茶を配ります。

(こんなにたくさんの人を覚えられるだろうか…)と、不安になります。

介護は時間との勝負?

とりあえず、何もできない『ぶーにゃ』は食事様子の見学をさせてもらいました。

先ほど「座っていなさい!」と、険しい顔をしていた女性職員が、ご自分で食事を食べられない

ご利用者の食事介助を行っていました。

見ていて思ったことは、とにかく早い!

大き目のスプーンに山盛り載せた液体状の食事(ミキサー食)

をどんどん押し込むように口に入れていきます。

ゴクンと飲み込む度に、ご利用者の口の端から液状の食べ物がどんどんこぼれてきます。

エプロンの上に落ちたもの、口からこぼれたものは、スプーンですくってまた口の中へ。

女性職員は時折「早く飲み込んで。いつまでも口の中に溜めないで。」と言っています。

食事(と言ってよいのか?)を5分ほどで終えると、次のご利用者の所へ移動。

『のんびり』や『ほのぼの』とは縁遠い時間が流れていました。

そして、イメージとは程遠い現実にがっかりしていました。

当時を振り返って

歩行能力の低下しているご利用者が独りで歩いて行こうとすると、

転倒して怪我をする恐れがあるため、近くで見守りや様子観察をすることは

どこの施設でも行っていると思います。

ただ、

「座っていなさい!」ではなく、「どうしました?お腰が痛いですか?」と、

言葉を置き換えるだけで殺伐とした雰囲気は緩和できると思います。

『ぶーにゃ』は当時お世話になったこの施設で、この後

まだまだ色々な出来事を見聞きすることになります。

余談ですが、

介護を始めて15年目の時は、30名ほどのご利用者の顔と名前を3日で一致させることができましたが、

当時の『ぶーにゃ』は、ご利用者全員の顔と名前を一致させることに

この後2カ月半ほどかかりました(汗)

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